不動産投資の初心者が自宅の住宅ローンを繰り上げ返済することについて

2020年8月30日

いま自宅の住宅ローンを必死に返済している不動産投資の初心者がいるとします。
不動産投資の融資を受けるにあたって多額な債務はナイに越したことはない!と考えて「繰り上げ返済」を検討しているとします。

さて、「自宅の住宅ローンは繰り上げ返済した方がいい」のでしょうか?

と、そのことについてふれる前に住宅ローンを受ける「期間」について説明させて下さい。
よく質問を受けるのが「住宅ローンは何年で組んだらいいのか?」というものです。

最長の35年で組んだ方がいいのか?
できるだけ短く組んだ方がいいのか?

結論から言います。

絶対に「最長」で組んでください。

まず、住宅ローンを最長年数で組む「メリット」についてです。

  • 毎月の支払額が少なく済む
  • 今ならば(2020年時点)超低金利で住宅ローンが組める
  • 住宅ローンの取得控除を最大限活用できる
  • 団体信用生命保険の恩恵をより長期間受けられる

一方、住宅ローンを最長年数で組む「デメリット」はというと、

  • 利息を多く払わなければならない(総額の支払が多くなる)
  • 「変動」金利の場合は金利上昇の可能性が高くなる

ということが挙げられますが、総じてメリットの方が多いです。

例えば、フラット35であれば現在35年の固定で1.2%程度、民間の金融機関だと当初10年固定の0.6~0.7%が多いのではないでしょうか。
いずれにしても、現状の住宅ローン借入金利は歴史的な水準からみても超低金利であります。

お金を貸す側の立場となると、基本的に長期になればなるほどリスクが高まることになりますから高い金利が適用される傾向にあります。

ただし、今は基準の金利自体が低いので、長期の借り入れを前提で融資を受けたとしても、その水準は非常に低いです(特に住宅ローン)。

事業用の融資でもそうですが、お金を長く借りようとしても簡単に長期間借りられるものではないんです。
なので、わざわざお金を長い期間で借りられるにもかかわらず、それをわざと短く組むということは金融機関からの恩恵を潰してしまっていることになります。

融資期間を最長で組むべき理由は、借り入れ期間を決めて一度融資実行を受けると、その融資期間を伸ばすことは非常に困難だからです。

一方、その逆に最長で組んでそれを短くすることは「繰り上げ返済」でできます。
例えば、本来は35年ローンが組める状況だけど「利息を払いたくない!」という理由で20年ローンを借りるとします。

そして、支払期間中に予定外の事態が生じてちょっと毎月の支払いがキツくなったとします。
金融機関に相談に行って「やっぱり支払期間を伸ばしてくれませんか?」とお願いしたとします。

当然ですが普通に断られます。
もちろん相談に乗ってくれる金融機関もありますが、ローンの返済期間の延長は誰もが出来るわけではないのです。


実際にローンの返済期間を延長するにはいくつかの条件が必要となります。
金融機関でその条件は異なるでしょうが、

  • 一般的には年収が一定の割合以下である事
  • 月収が定められている金額の水準以下である事
  • 現在返済が困難である理由がある事

などが条件となり、返済期間の延長が認められる場合もあります。

しかし、金融機関の審査を通過するのは実際に難しく何度も交渉しなければならない場合が多いですし、金融機関に申請をして認められるまで期間が予想以上に長くなる場合もあり、その間に滞納などになってしまうと元も子もありません。

毎月の返済が厳しい!という人はそもそも様々な支払い状況に切羽詰まっている場合が多いです。
そんな中で融資期間延長の申請を何度も悠長にやってる暇などありません。

つまり、銀行側が融資期間の延長という相談に乗ってくれたとしても、実際にそれが実行されるかどうか保証もない中で、その審査に時間だけが取られのは切羽詰まった状態の債務者に対してリスクが大きすぎます。

では、繰り上げ返済をすることについてですが、現状であれば「しないほうが良い」です。

理由は、先の説明のとおりで、超低金利でお金を借りられているという喜ぶべき状態だからです。
この低金利以上で運用できる投資商品が身近にある方は、繰り上げ返済ではなく投資に回すべきです。

言い換えると、繰り上げ返済は「低利回り」の住宅ローンに投資しているのと全く同じことです。
また、繰り上げ返済によって住宅ローンの様々な副次的なメリットも潰してしまうこととなります。

その最たるものが「住宅取得控除」です。

住宅取得控除とは、ザックリいうと住宅ローンを組んで居住用物件を購入した場合にその年末の住宅ローンの残債×1%の金額が税額控除されるというものです。

もっと簡単に言うと、例えば今年、家を買ってその年末にまだローンが3000万円残ってたとします。

3000万×1%=30万

この30万円が給料などで既に納めた所得税から還付を受けることができるという仕組みです。
なので、繰り上げ返済すればするほどローン元金が減れば減るほど還付金も少なくなるわけです。

また、住宅ローンを組む際には「団体信用生命保険」にも加入します。
団体信用生命保険とは、ローンを組んだ方に万が一のことがあった場合、残りのローン残債が全て保険で賄われて残ったローン残債が全てチャラ(0円)になるという保険です。

例えば家を購入して2年後に所有者に万が一のことがあったとしましょう。
そうなると、残りのローン残債は全て保険でまかなわれるわけです。

購入してすぐに繰り上げ返済をどんどん進めてしまうと多くの現金が手元から出ていきローンの元金を減らすこととなりますが、2年後には結局ローン残債は保険で0円になることになり、結局残るのは無借金の物件です。
なので、逆に言えばそれまでに使ったお金が少なければ少ないほど、団体信用生命保険の恩恵を受けやすいわけです。

もちろん万が一の事態の発生を予測することは不可能ですから、それを前提で考えるの話がおかしくなりますが、あくまで副次的メリットとして考えれば合点がいく話かと思います。

「繰り上げ返済」は絶対にしてはならない!というわけではありません。
金利が上昇局面にあるタイミングなら、繰り上げ返済を進めてもOKです。

金利が上昇していく局面であれば毎月の支払が増加してしまうので、そのリスクヘッジとして繰り上げ返済はお勧めします。